大腸カメラは検診の便潜血検査でひっかかる、血便がでる、大腸がんを疑う症状があるなどの場合に行われます。また大腸がんの家系であることや、健康診断のオプションとしても大腸カメラが行われることがあります。大腸カメラは直接腸を確認することができるので、早期大腸がんやがんになる前の良性ポリープ、潰瘍性大腸炎、Crohn病などさまざまな病気を診断することができます。
その半面、大腸カメラを受けるには事前に下剤を飲んで便の処置が必要であることや、検査による出血や腸穿孔などの合併症の危険があることなど、デメリットもあります。
ここでは、このような大腸カメラをどれくらいの頻度で受ければよいかについてご説明していきます。
大腸カメラはどのくらいの頻度で受けるといい?
(一般社団法人 消化器内視鏡学会HP, https://www.jges.net/citizen/faq/large-intestine_04, 2024年10月8日 参照)
初回の検査をうけて異常がなかった方
2020年の日本消化器内視鏡学会のガイドラインでは、初回の大腸カメラで異常がなかった場合は、以降、便潜血検査など一般的な検診で問題ないとされています。日本では40歳以上の方には年1回、大腸がん検診として便検査が行われています。
ただし、後述いたしますが、便潜血ではなかなか早期大腸がんを発見するのは難しいともいわれています。再度大腸カメラで異常がないかを確認する場合は、大腸カメラをしてから5年は新たな病変が見つかる可能性が低いといわれていますので、5年後に実施することをお勧めします。
大腸ポリープが見つかった方
多くの場合は3年後に再検査が必要になります。ポリープの数が多いときや、サイズが大きい場合は1年後の再検査をお勧めすることもあります。一度の検査ですべてのポリープが取り切れなかった場合は、3か月後や6か月後に再度検査を行うこともあります。
大腸がんを治療した方
内視鏡で大腸がんの治療を行い、完全にがんが取りきれたという方は、基本的に1年後の再検査になります。治療の結果によっては、それよりも短い間隔で再検査が必要になることもあります。
大腸カメラ検査を定期的に受けた方がいいのはなぜ?
大腸がんは増えている
高カロリー食・高脂肪食の増加、生活習慣の変化などにより、大腸がんにかかる方が増えています。男女ともに40代から増え始め、高齢になるほど増加していきます。さらに2018年の調査では、がん全体のうち大腸がんで亡くなられた人数は、男性では第3位、女性では第1位になっており、健康に生きていくために特に警戒すべき病気であることがわかります。
大腸カメラは早期発見に向いている
現在日本の大腸がん検診は便潜血という方法で行われています。この便潜血という検査はその名の通り、便に血が混じっているかを調べる検査ですが、早期大腸がんでは50-60%程度しか見つけることができないといわれています。進行したがんでは80-90%で見つけることができることから、むしろ便潜血が陽性になったころには手遅れになっているという可能性もあります。全員が大腸カメラをすればいいじゃないか、とお考えになるかもしれませんが、健康診断として日本の40歳以上の方をすべて大腸カメラするには、あまりに時間と人手がかかりすぎます。結果的に健康診断では毎年繰り返し便検査をすることで、早期がんをひっかける確率を高めようとしています。
対して大腸カメラでは、直接大腸のなかを確認するわけですから、80-95%の確率で早期がんや、がんになりそうなポリープを発見することができます。100%ではないのは、大腸がひだのある構造をしており、どんなにベテランの内視鏡医であっても、ひだの裏に隠れたポリープなどを見逃してしまうことがあることや、腸の形は人によってさまざまであり完全に奥まで観察できないような人もいることが理由です。そういった意味でも、繰り返し検査をうけることで、見逃しの危険性を防ぐことができます。
早めの発見で内視鏡手術で治療ができる
すべてのがんで早期発見は重要ですが、特に大腸がんにおいて重要な点は、早期であれば全身麻酔でお腹を切ったりする必要がなく、大腸カメラでの手術で済んでしまうことにあります。術後の負担も大腸カメラの治療であれば、ほとんどありません。
異常がなくても大腸カメラ検査を受けましょう!
大腸カメラを受けたことがない方は、一度は受けてみることをお勧めします。これまでお話ししてきた通り、大腸がん検診では発見しきれないものがあります。一度大腸カメラをうけていただくことで、今後どれぐらいのペースで、どのような検査をしていけばよいか、ご相談することもできます。
中でも、①40歳以上の方、②遺伝性の大腸がんの疑いがある方は検査をお勧めします。30歳代でも食生活が乱れている、煙草を吸っている、肥満体、飲酒をよくするような方も、大腸がんの危険性があるため、おすすめします。そして当然ですが検診で異常があった方も、症状がなくても検査をするようにしましょう。
まとめ
大腸カメラは決して楽な検査ではありませんが、大腸がんの早期発見に非常に有用です。検診では見落としの可能性があるため、40歳を迎えた方や、親族に大腸がんが多い方は一度大腸カメラの検査を受けてみることをおすすめします。