EMR(内視鏡的粘膜切除術)とは?
EMR(内視鏡的粘膜切除術)は、胃や大腸にできたポリープを内視鏡を使って切除する治療法です。この治療は、開腹手術のように大きな切開を行わないため、体への負担が少なく、比較的短い回復期間で済むのが特徴です。
具体的には、病変がある粘膜の下に生理食塩水などの液体を注入し、粘膜をふくらませて病変部分を持ち上げます。その状態で、病変を含む粘膜を内視鏡を使って切除するという方法です。この手術により、病変を正確かつ安全に取り除くことが可能です。
EMR(内視鏡的粘膜切除術)の対象
EMRは、良性ポリープの中でも将来的に癌化する可能性があるものや、早期段階の悪性腫瘍が対象です。一度に切除できるポリープの大きさは約15mmまでで、それを超える場合にはESD(内視鏡的粘膜下層切開剥離術)が適応となることがあります。
対象の早期がん
胃: 2cm以下で潰瘍のない高分化型腺癌(深達度m)
大腸: 分化型癌で深達度sm1まで
食道: 多発せず全周に及ばない深達度m2までの癌
EMR(内視鏡的粘膜切除術)の治療方法
EMRでは、ポリープの下に生理食塩水を注入し、盛り上げた部分にリング状の金属ワイヤー(スネア)をかけて絞り込み、高周波電流を使って切除します。
また、当院では十二指腸に特化した「Under Water EMR(UEMR)」を採用。消化管を水で満たした状態で粘膜下への注入を省略し、スネアで直接ポリープを切除する方法です。この手法は、合併症のリスクを軽減し、優れた治療成績を収めています。
EMRの注意事項・禁忌事項
EMR後の注意点
EMRは開腹手術に比べて身体への負担が少なく、痛みもほとんどありませんが、ポリープの切除という治療内容には変わりありません。以下の注意事項を厳守いただく必要があります。
1週間控えること
・アルコールの摂取
・力仕事や腹圧をかける作業、ゴルフなどの激しい運動
・長時間の車の運転や旅行
入浴について
シャワーは翌日から可。入浴は1週間後から可能。
食事制限
流動食から開始し、徐々に通常の食事へ戻します。
抗血栓薬の調整
心疾患や脳疾患で抗血栓薬を服用中の方は、数日間内服を中止する必要がある場合があります。かかりつけ医と相談のうえ、当院からのお手紙をご持参ください。
病理検査について
切除したポリープは病理検査に提出されます。結果が出るまで数週間かかる場合があります。
日帰り治療の条件
小さなポリープが少数の場合に限り、日帰りでの切除が可能です。ただし、出血などの合併症が発生した場合にすぐ対応できるよう、以下の条件を守れる方のみ対象となります。条件を満たせない場合やリスクが高い場合には、入院治療を原則としています。
合併症の可能性
まれに予期せぬ合併症(出血・穿孔など)が発生することがあります。また、場合によっては外科的手術が必要となる可能性もありますので、担当医の指示に従って治療後の生活に注意してください。