食道がんとは?


食道は喉から胃に食べ物を運ぶ管状の臓器です。食道がんは、食道の内側を覆っている粘膜の細胞が、がん化することで発症します。初期段階での症状はほとんどありませんが、がんが進行すると食べ物の通過を妨げ、痛みやつかえ感などの症状を引き起こします。

食道がんは進行するとどんどん外側に向かって拡大していき、周りにある心臓、大動脈、肺、気管などの重要臓器に浸潤していきます。また食道の壁の中にある血管やリンパ管にがん細胞が侵入すると、血液やリンパ液の流れに乗って全身に転移していきます。

食道のイラスト

食道がんになってしまう方は、2019年のデータで、人口10万人あたり男性が35.4人、女性が7.2人でした。近年男性では低下傾向、女性ではやや増加傾向にあり、男性、女性ともに60-70歳代の方に多くみられます。

また食道がんでは約20%の人に別のがんが合併していると言われています。食道がんの発症に喫煙や飲酒が関係していることから、結果的に他の臓器にも負担がかかっていると考えられ、肺がんやのどのがん、胃がん、大腸がんなどがみられます。

食道がんの余命は、がんのステージに大きく依存します。早期発見された場合の生存率は比較的高いですが、進行がんの場合は生存率が低下します。診断されてから5年後に生存している確率は、ステージIで約80%、ステージIVで約10%とされており、早期発見と治療が重要です。

食道がんの原因


食道がんには主に扁平上皮がんと腺がんの2種類があり、それぞれ異なった原因により発生すると言われています。

扁平上皮がんは食道がんの中で最も一般的なタイプであり、食道の上部および中部に発生します。喫煙やアルコール摂取が扁平上皮がんの発生と強い関連があると言われています。特に飲酒については、アルコール分解能力が弱い方、つまりお酒を飲むと顔が赤くなる体質の方が、飲酒をつづけると食道がんになる可能性が高くなることがわかっています。また高塩分食や熱い飲食物も食道がんの危険性を高めるとされています。

お酒とたばこ

腺がんは逆流性食道炎やバレット食道と関連しており、日本人ではもともと少なく、欧米人に多いタイプでした。しかし近年の食生活の欧米化や肥満の増加に伴い、日本でも増加傾向にあります。

食道がんの症状


食道がんの初期段階ではほとんど症状がありません。稀に早期でも食事をしたときに胸がチクチクする感じ、温かい飲み物がしみる感じを訴える方もおられます。わかりやすい症状は病気が進行するにつれて出現し、食べ物の飲み込みづらさ、体重減少、胸痛、声のかすれ、咳や喀血、嘔吐や吐血などが出てきます。

食道

がんが大きくなるにつれ食道の内側が狭くなっていき、飲食物がつかえやすくなり、飲み込みづらさや、つかえ感を感じるようになります。がんが更に大きくなると水分でも飲み込めなくなり、嘔吐するようになります。食事の量も減っていき、体重が減少します。

がんが食道を越え、肺や大血管などの周りの臓器に浸潤していくと、胸や背中に痛みを感じるようになります。食道の近くには声帯を調整する神経が通っており、その神経が侵されると声がかすれるようになります。気管にがんが進出すると、咳が出やすくなったり、咳の拍子に血がでることもあります。

食道がんの検査内容について


すべてのがんの検査は大きく二つの段階を踏みます。まず「がんかどうかを確かめる検査」を行い、次に「がんの進行度(進み具合)を調べる検査」を行います。

内視鏡検査

食道がんの場合、がんかどうかを確かめるには、内視鏡検査(胃カメラ)で病変の有無や場所部位を調べます。内視鏡検査は口や鼻から5〜106mm程度の管状のカメラを挿入し、食道の内部を直接見ることができます。加えて、NBIやBLIと呼ばれる特殊な光を当てたり、ヨードなどの薬品を併用することで、正確に病変の範囲を診断することができます。

内視鏡検査で疑わしい部位があった場合、その一部をつまんで取り(生検)、顕微鏡でがん細胞の有無を確認します(病理検査)。この病理検査でがん細胞が見つかったとき、初めて食道がんという診断になります。病理検査ではさらに食道がんのタイプ(組織型)を調べます。がんのタイプによって治療方針が異なってきます。

内視鏡検査以外にも、バリウムを飲んで、がんの位置や大きさ、食道の狭さなどを確認する上部消化管造影検査が行われることもあります。

食道がんの診断がつくと、次にがんがどこまで進行しているかを調べていくことになります。通常は造影剤をつかったCT検査を行い、首からお腹にかけて転移がないか、周りの臓器にどこまで浸潤しているかを調べます。上部食道にがんがあった場合は、超音波検査で首の回りの気管、甲状腺、頸動脈などの臓器や、リンパ節に転移していないかをより詳しく検査していきます。

内視鏡検査中に、がんの深さをより深く確認するために、超音波内視鏡検査が行われることもあります。超音波内視鏡は胃カメラの先端に超音波が備わったもので、先端を食道の壁に当てることで壁の中、食道周囲の臓器まで確認することができます。

その他、PET検査などで多臓器への転移の有無を確認することがあります。PET検査ではリンパ節転移や、肺、肝臓、骨転移など全身の病変を調べることができます。先に述べた通り、食道がんは他のがんを合併することも多いため、全身を検査する必要があります。

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