ピロリ菌とは?


ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に感染する、らせん形の細菌です。かつては強酸性の胃内には細菌はいないと考えられていましたが、1979年に胃の粘膜からピロリ菌が発見され、胃炎や胃潰瘍などの病気に深く関わっていることがわかってきました。

ピロリ菌は胃酸がまだ弱い子供の頃に感染し、一度感染すると除菌をしない限り胃にとどまり続け、慢性的な炎症を引き起こします。

ピロリ菌

ピロリ菌に感染するきっかけはまだはっきりとは判明していませんが、ピロリ菌を持っている親から子供への口移し、井戸水の使用などが原因ではないかと考えられています。上下水道の整備やピロリ菌についての知識が広まったことで、近年のピロリ菌感染率は低下傾向にあります。1950年代生まれの方が2人に1人感染していたのに対し、1990年代に生まれた方は7人に1人、2000年代に生まれた方は16人に1人まで低下しています。

ピロリ菌は胃に慢性的な炎症を引き起こすことで、様々な病気の原因になると言われています。胃炎や胃潰瘍、胃がんを始め、特発性自己免疫性血小板減少症という血小板(止血の役割がある血液の成分)が減ってしまう病気や、慢性蕁麻疹にも影響があることがわかっています。

胃がんとピロリ菌の関係


多くの研究で、ピロリ菌感染者に胃がんが多いことが確認されています。ピロリ菌が慢性的に胃の粘膜に炎症を起こすと、萎縮性胃炎という状態になります。通常、胃の内側の細胞は数日で入れ替わっていきますが、ピロリ菌は自分のすみかを維持するために毒素を出し、その入れ替わりを抑制します。その結果、慢性胃炎の状態が長続きし、胃粘膜がどんどん萎縮していくと言われています。ここに高塩分食や喫煙などさまざまな要因が関わり、胃がんが発生するのではないかと考えられています。

一度ピロリ菌に感染してしまったらそれで最後というわけではなく、ピロリ菌を除菌することで、胃がんの予防に効果があることが示されています。ピロリ菌感染と胃がんの関係は深く、がん検診や内視鏡検査(胃カメラ)が胃がんの予防や治療に重要な役割を果たします。

ピロリ菌の検査内容について


先ほど述べた通り、ピロリ菌に感染し時間がたつと胃の内側は萎縮性胃炎などの特徴的な見た目を呈するようになります。そこで内視鏡(胃カメラ)を用いることで、胃内を観察しピロリ菌に感染している可能性を、直接確認することができます。ただややこしいことに萎縮性胃炎があっても、「今現在」必ずピロリ菌に感染しているわけではありません。過去にピロリ菌に感染していたけども、別の病気で抗菌薬の治療を受け、偶然除菌されている可能性もあります。そこで、内視鏡検査で萎縮性胃炎を見つけた場合、次の段階として現在もピロリ菌に感染しているかを調べる必要があります。

ピロリ菌に感染しているかを確定させるには以下のような検査があります。

内視鏡

生検検査


内視鏡検査中に、胃粘膜の一部をつまんで取り(生検)、顕微鏡で菌を確認する方法(鏡検法)、ピロリ菌が作り出すアンモニアの反応を調べる方法(迅速ウレアーゼ試験)、胃粘膜を培養しピロリ菌が増えるかを確認する方法(培養法)などを行いピロリ菌の存在を確認します。

尿素呼気試験


この検査は内視鏡を使わずにピロリ菌の存在を調べることができます。ピロリ菌はウレアーゼという酵素を出し、尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解します。この特徴を利用し、尿素を含んだ検査薬を内服し、内服前後で吐いた息(呼気)の中に含まれる二酸化炭素の量を比較することで、ピロリ菌の存在を確認することができます。およそ30分で終了する検査ですが、胃の中になにかあると正しい検査結果にならないため、食事を取らずに検査をする必要があります。

便中ピロリ菌抗原検査


便中のピロリ菌抗原を検査することで、ピロリ菌の感染を確認する方法です。この検査法は便を調べるだけですので体への負担が少なく、内視鏡検査や生検に比べて手軽に行うことができます。

血液検査


血液中のピロリ菌抗体を検査することで、ピロリ菌感染の有無や免疫反応を調べることができます。ただし、この方法は現在の感染の有無を確定するものではなく、過去の感染歴を示す可能性があります。

これらの検査の特徴から、一般的には、内視鏡検査でピロリ菌感染が疑われた場合そのまま生検検査を行い、その後後述の除菌治療を実施、治療効果を判定するために尿素呼気試験や便中ピロリ菌抗原検査を行う、という流れが多いようです。

ピロリ菌の治療方法


ピロリ菌の除菌には抗菌薬が使用されます。一般的には、アモキシシリン、クラリスロマイシン、メトロニダゾールといった抗菌薬が使用され、2種類の抗菌薬を組み合わせて内服します。これらの抗菌薬と併用して、胃の酸の分泌を抑制する薬物が使用されます。ピロリ菌による胃粘膜の損傷が軽減され、抗菌薬の効果が最大限に発揮されることが期待されます。これらの薬を朝、夕食後に合計7日間内服することになります。

薬を飲み切って4〜12週間経過したのち、尿素呼気試験や便中ピロリ菌抗原検査で除菌ができたかを確認します。なぜ期間をあけるかというと、薬の使用直後では少量のピロリ菌が生き残っていても見逃してしまう可能性があるからです。菌数が少ないと思ったより検査数値が変動せず、間違えて陰性(偽陰性)を示してしまうのです。4週間程度経過すると、ピロリ菌の生き残りがいた場合はまた菌数が増えてきているため、検査の判定がしやすくなります。より時間が経ったほうが確実性が増すため、8週間後以降の受診を進める病院が多いようです。

またピロリ菌は抗菌薬に対して耐性を持つようになってきており、先述の抗菌薬をつかっても除菌しきれないことがあります。その場合様々な抗菌薬を組み合わせて再度除菌治療を行うこともできるので、治療後も必ず医療機関を受診し、除菌ができたかを確認をすることが重要です。

ピロリ菌検査の保険診療について


注意点として、ピロリ菌検査を保険診療で受ける場合は、まず内視鏡検査を受けて萎縮性胃炎などピロリ菌に特徴的な見た目があるかを確認する必要があります。胃の調子が悪いからピロリ菌の検査をしたいといった場合も、内視鏡検査を受けてからでないと自費診療になってしまいます。これまで述べてきた通り、ピロリ菌と胃がんには深い関係があり、ピロリ菌治療だけ行ってしまうと早期胃がんなどを見落とす恐れがあるからです。

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